日本財団 図書館


 

です。私はイギリスヘ行きますと自動車を借りて、絵はがきのように美しい田園地帯をよくドライブしますが、そういうようなところにはグラウンドワーク・トラストはあまりございません。グラウンドワークの活動の拠点は、やはりマンチェスターの近郊のように経済的に落込んでいて、大きな看板が林立していたり、雑然と荒れたままの建物が幾つもあるようなさびれたところです。
以上ご紹介しましたように、グラウンドワークの活動を振り返ってみますと、イギリスのボランティア活動は、1970年代までのものと80年以後のものは区別すべきだと考えられます。
イギリスのボランティア活動といいますと、ナショナル・トラストが有名です。美しい森や海岸線を買い取ったり、歴史的な建造物を保存する運動を展開してきたナショナル・トラストは活動を開始してからちょうど100年経ちました。会員が200万人と言われていますが、非常に大きな組織になりまして、資産もたっぷりあります。活動もかなり定型化してきて、一つの行政組織とあまり変わりなくなってきています。それに対しまして、グラウンドワークのような新しい運動はまだ10年そこそこです。現在、市民の期待は、むしろ80年以後の新しいボランティア活動に集まっております。
ところで、この「ボランティア」という言葉ですが、日本では2年ほど前の阪神大震災をきっかけにしましてよく耳にするようになりました。しかし、このままボランティア活動が日本に定着するかどうか、意見が分かれます。
「ボランティア」という言葉の意味を確かめるため、いまから100年くらい前に出版された世界的に権威のある英語の辞書をひいてみますと、意外なことに「自分の意志でなった兵士、義勇兵のこと」だと定義されています。さらに「義務を負った兵士、つまり給料をもらっている兵士あるいは徴兵された兵士よりも、自分の意志で参加した兵士のほうが戦果を挙げることができる」と解説されています。そのほかいくつか定義をしたのち、おしまいに「ボランティア」という言葉は、軍事だけではなくて「一般の市民活動に対しても使われる」と書かれています。
今後の日本の社会システムは、義務を負った人間にまかせておけばいい、給料をもらっている人間が中心になるべきだという発想から、自由意志を持った人間が問題に対処する、そういう時代に変わっていく−私の希望を混ぜこぜしますと−、そういう社会になっていったらいいなと思う次第です。
4 日本への適用性一パートナーシップ社会構築のプログラム
最後のまとめにまいりたいと思います。日本はこの50年間、大変な繁栄を誇ってまいりました。だからイギリスがイギリス病で悩んでいたとき、私たちは「日本は戦争では負けたけど経済では勝った」といって喜んだものでした。
ところが、現在日本もイギリスと同じような病気を抱えつつあります。景気はなかなか回復しません。その上、先進国ではトップクラスの財政赤字を抱え込んでしまいました。
そのうち日本の財政赤字は地球規模で批判されるかもしれません。財政赤字や通貨の安定という点では、イギリスの方がずっと優等生です。私はいろいろなところでお話しすると

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION